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東京地方裁判所 平成6年(ワ)8416号 判決

東京都新宿区西落合四丁目一〇番一三号

原告

本田博俊

右訴訟代理人弁護士

鈴木正具

右訴訟復代理人弁護士

橋長廉人

フランス国 一三六〇〇 ラ・シオタ アンパス・デ・ソルビエール 五

被告

ジャン-ミシェル・オノフリ

主文

一  原告が、被告に対し、別紙目録記載の特許を受ける権利の移転請求権を有することを確認する。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決に対する控訴のための附加期間を三〇日と定める。

事実及び理由

一  原告は、主文と同旨の判決を求め、その請求原因として、次のとおり述べた。

1  原告は、自動車レース用エンジンの製造、供給を主たる業務とする株式会社の代表取締役を務めている者であり、被告は、小型レジャー潜水艇の製造、販売を業とする訴外スマル・インダストリーズ・エス・エー(本店 フランス国。以下「スマル・インダストリーズ」という。)及び訴外スマル・サービス・インターナショナル・サール(本店 フランス国。以下「スマル・サービス」という。)の取締役社長を務めていた者である。

2  原告は、平成四年一二月二七日、スマル・インダストリーズ、スマル・サービス及び被告との間で、次の約定の契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

(一)  原告は、スマル・インダストリーズに対し、三〇〇〇万円を遅くとも平成五年一〇月三一日を弁済期限として、貸し付ける。

(二)  被告は、原告に対し、右貸金債権の担保として、被告が日本の特許庁に出願した別紙目録記載の特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」という。)を担保に供する事を約し、また、原告から要請がある場合には、速やかに原告が第三者に対して対抗要件を備えるための手続をし、必要書類を原告に交付する。

3  日本法上において、特許を受ける権利に設定することができる担保は、譲渡担保であるから、本件契約の前記2(二)の約定は、被告が、原告に対し、本件特許を受ける権利について、譲渡担保を設定することを約したとものと解するべきである。

4  原告は、平成四年一二月三〇日、本件契約に基づき、スマル・インダストリーズに対し、三〇〇〇万円を送金して貸し付けた。

5  被告は、本件特許を受ける権利を譲渡担保に供するために、本件特許を受ける権利を原告に移転すべき義務を負っているにもかかわらず、本件特許を受ける権利を原告に移転することについて協力しようとしない。

6  よって、原告は、本件契約中の譲渡担保設定契約に基づいて、被告に対し、原告が被告に対し、本件特許を受ける権利の移転請求権を有することの確認を求める。

二  本件は、フランス国在住の日本国籍を有しない者を被告とする訴訟であるが、わが国の特許法に基づく特許を受ける権利に関する訴訟であるから、わが国の裁判管轄権に服するものというべきところ、被告は、適式な呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、民事訴訟法一四〇条三項、一項を適用してこれを自白したものとみなす。

なお被告は、英語で記載した当裁判所裁判長宛の書面を提出しているが、日本の裁判所においては日本語を用いるべきであり(裁判所法七四条)、民事訴訟において外国語をもって作成した文書を提出する場合は訳文を添附することを要するから(民事訴訟法二四八条)、右書面をもって答弁書その他の準備書面と扱うことはできない。

三  右の事実によれば、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、附加期間の定めについて同法一五八条二項を、各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 森崎英二)

目録

一 出願日 昭和六三年一二月一六日

一 出願番号 昭六三-三一八三〇七号

一 出願公開日 平成元年八月八日

一 出願公開番号 平一-一九七一九七号

一 発明の名称 自己推進式可潜艇

一 出願人 ジャン-ミシェル・オノブリ(フランス国)

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